イーサリアムに投資しなくなった理由

イーサリアムはスマートコントラクトという、お金の価値の移動だけでなく、契約等の情報もブロックチェーンに書き込んでしまって、これらの契約の執行も自動的に行ってしまおうというものです。

これが実現すれば、すごく効率的な世の中が訪れそうという期待から、私はイーサリアムにも魅力を感じ投資していました。

しかし、THE DAOの事件をきっかけにイーサリアムへの投資をすべて辞め、イーサリアムはすべて売却しました。

THE DAO事件と3つの選択肢

THE DAO事件は、イーサリアムのプラットフォーム上で動くTHE DAOというアプリケーションソフトに問題があり、そのTHE DAOの問題をハッカーにつかれ3.6百万ETHという大量のイーサリアムが奪われてしまうという事件が2016年6月17日に起きました。

その被害額は、事件直前のETH/USDが17.50ドルだったので、円に換算すると65億円という巨額のものでした。

この対応として、イーサリアムの開発者側が当時取れる方法は3つありました。

  1. 一つ目は、何もしないで、ハッカーの勝ちを認めイーサリアムの引き出しを許容するという選択肢。
  2. 2つ目は、ソフトフォークという方法で、ソフトフォークによりハッカーのアドレスを凍結してしまい、ハッカーが奪った3.6百万ETHを使えなくする方法です。
    但しこのソフトフォークにはデメリットもあって、このソフトフォークによりハッカーが奪った3.6百万ETHも使えなくなると同時に、このETHのもともとの所有者であるTHE DAOもこのETHを使えなくなってしまいます。
  3. 3つ目は、ハードフォークという方法で、そもそもこの事件が起きなかったことにしてしまうという選択肢です。

 

この3つの選択肢がある中で、当時1番か2番の選択肢になるだろうと思っていた人が大多数だったと思います。

なぜならイーサリアムは非中央集権型のクラウドコンピューティングプラットフォームとして提唱されたプロジェクトであり、開発者であろうが特定主体の恣意的な判断によってプロトコルが変更されることを徹底的に否定したものであると考えられていたからです。

既存の中央集権的なデータサーバーではなく、そもそもなぜブロックチェーンを使うのかというと、ブロックチェーンを使うことにより、誰であろうと改ざんできない仕組みが実現できるからです。

誰であろうと改ざん不可能という信頼性により、データの信頼性を保つことがブロックチェーンを使う趣旨であり、改ざん可能であるならば、従来のような中央集権的なサーバーを使えば良いだけで、ブロックチェーンを使う意味がありません。

ブロックチェーンを使っている以上誰であっても改ざん不可能という前提なくして、ブロックチェーンを使う意味がないのです。

 

例えば、ブロックチェーン技術を特許の申請等でも利用しようみたいなアイデアがありますが、そのアイデアをどちらが先に考えたのかをブロックチェーンに記録したとして、そのデータが改ざん可能であれば、そのデータに信頼性はありません。

なので、このTHE DAO事件に関しても起きてしまったことは起きてしまったこととして、非中央集権型でブロックチェーンを使うシステムであるイーサリアムもビットコイン同様、改ざんされないだろうというのが、ビットコインコミュニティー及びブロックチェーン技術の発明を画期的と考える人達の考えでした。

THE DAO事件でのイーサリアム開発者の対応に失望

ブロックチェーンを使う意味が誰であろうと改ざん不可能という前提であるにもかかわらず、イーサリアム開発者であるVitalik Buterin氏はイーサリアムはまだ実験段階であるとして、3つ目の選択肢である「そもそもこの事件が起きなかったことにしてしまうという選択肢」であるハードフォークによるを実行します。

この段階では、まあ確かに実験段階だし、ハードフォークという対応も仕方がないかと思いましたが、次の瞬間「ありえねーだろ」となってしまいました。

その理由が

イーサリアムの開発者のVitalik ButerinもTHE DAOに出資していた

ということが明らかになったからです。

ここでイーサリアムは自分の中で完全にアウトになりました。

イーサリアム開発者もTHE DAOで一儲けしようとしていたが失敗

イーサリアムの開発者であるVitalik Buterin氏がTHE DAOに出資していたってことは、結局DAOが自分の開発したイーサリアムを使ったプロジェクトなので、情報等に関して他の投資家より明らかに有利な状況にあるのを承知な上です。

Vitalik Buterin氏からすれば、DAOに出資してその後DAOが高騰すれば誰よりも有利な条件で大儲けできるということがほぼ確実に分かっていた状況で、DAOに出資して美味しい思いをしようとしたら、それがハッカーによって失敗したので、じゃあハードフォークで無かったことにしてしまおうというのは、いくらなんでも虫が良すぎると言えるでしょう。

私は、中央集権的な仕組みの中でも当たり前のことですが、このブロックチェーンという誰であろうと改ざん不可能を前提とした世界では、いくら開発者といえども金儲けを狙った挙句、失敗したからその損失を救済するためのハードフォークなんて絶対にあってはならないと思います。

投資の世界では自己責任が常識

投資の世界を経験したことがある人なら、必ずみんな身に染みているであろうことが一つあります。

それは、「投資は自己責任」ということです。

利益も損失もすべてが自己責任、これが投資の世界の常識です。

「楽して金儲けをしようとして、損失が出たから無かったことにする」というのは、投資の世界では通用しません。

もし、損失が出た時だけリセットボタンが押せるなら、みんな押したいはずです。

このイーサリアムの開発者であるVitalik Buterin氏の金儲けを狙ったTHE DAO出資の失敗からのリセットボタンという対応は、多くの人の不信と怒りを買ったはずです。

何の問題もないプラットフォーム側のイーサリアムがハードフォークしてしまうという愚

今回の事件では、開発者側の問題もそうですが、問題解決方法として、何の問題もないプラットフォーム側のイーサリアムがハードフォークして対応してしまったということも問題です。

イーサリアムはアプリケーションを走らせるプラットフォームなので、これから無数にアプリケーションを走らせていくことになるかもしれません。

そんな中、THE DAOのようにアプリケーション側に問題があり今回のように大量のETHがハッカーに奪われてしまうような事件が今後も起こる可能性があります。

その度に何の問題もないプラットフォーム側のイーサリアムがハードフォークして対応してしまうようでは、ブロックチェーン技術を使った改ざん不可能なものという前提としてどうなのかと思います。

後々にも禍根を残してしまう対応

今後もTHE DAOのような事件が起こる可能性があるとして、ここでみんなが疑問に思うのは、今後同じような事件があった場合のイーサリアム開発者側の対応がどうなるのかということです。

「あの時は自分のお金がかかっていて損失が出てしまったから、ハードフォークで無かったことにしたんだよ」

「でも今回は自分のお金がかかってないから知らない」というのは、ね、どうなんでしょう。

今後、同じような事件が起こった際に、THE DAOの時はハードフォークで対応したという事実が問題になるはずです。

 

このTHE DAO問題のイーサリアム開発者側の恣意的な酷い対応により、私はイーサリアムに失望し、イーサリアムへの投資を辞めました。

ちなみに、このTHE DAO問題の開発者側の酷い対応に納得できなかった人達が一定数存在し、このイーサリアムのハードフォークという対応を良しとせず分裂してできたのが、イーサリアム・クラシックで、こちらが本来のイーサリアムのオリジナル版です。

Vitalik Buterin氏はイーサリアム・クラシックをサポートしないと発言しているので、今後のイーサリアム・クラシックがどうなるかは分かりませんが、「投資はすべて自己責任で、損失も自己責任として受け入れている一投資家として」このイーサリアムを開発している開発者の対応は到底納得できるものではありません。

まとめ

今回のような、開発者側が損した時だけハードフォークで無かったことにしてしまい、開発者が関わっていない場合や大儲けした時はハードフォークしないなんてことになったら、イーサリアムはただの開発者側に都合の良いシステムというだけのものになってしまうと感じています。

今後同じようなことが起こった場合の開発者側対応を見てみないと分かりませんが、今回のことで起きた事実は、「イーサリアムに関しては、ユーザーの意思とは関係なく、アプリケーション側の問題を何の問題もないプラットフォーム側のイーサリアムのハードフォークで解決してしまった」という事実で、イーサリアムは特定主体の恣意的な判断によってプロトコルが変更されるものであるということが証明されたということです。

これによりイーサリアムは、自分の中でビットコインとは全く別の恣意的で中央集権的なものという位置づけになりました。

参考資料