国家が破綻してもビットコインは破綻しない

今日は、単一通貨論と複数通貨論についてビットコインの視点で見ていきたいと思います。

この記事を書こうと思ったきっかけは、苫米地氏がビットコインと今秋三菱東京UFJ銀行から発行される予定のMUFGコインについて解説している動画を見たのがきっかけです。

こちらの動画です。

約9分と短い動画ですので、ビットコインやMUFGコインに興味がある方は一度見てみると面白いと思います。

ハイエク氏の自由通貨論とビットコイン

では始めたいと思います。

皆さんはハイエクという人物をご存知でしょうか?

ハイエク氏

フリードリヒ・フォン・ハイエク(1899~1992)オーストリアウィーン生まれの経済学者、哲学者 1974年ノーベル経済学賞受賞 オーストリア学派の代表的学者

 

私は苫米地氏のビットコインへの見解を知りたくて、色々調べている時に偶々この動画に行きつき、初めてハイエクさんのことを知りました。

ハイエク氏の主張と複数通貨が望ましい理由

この動画で苫米地氏が解説してくれているハイエク氏の主張はこうです。

ノーベル経済学で有名なハイエクさんっていう人が、「通貨自由化論」ってというのを1976年に出している。

彼のその論理っていうのは何かっていうと、複数通貨を一つの国で同時流通するのは単一通貨より望ましい。

なぜ望ましいのか?

簡単に言うと一つの法貨、日本だったら円だけだと、通貨発行権は国が独占しているので、政府=公務員というのは経済競争の中にいないので、どんどん仕事を増やしていく、人を増やしていく、あとは公共投資とかで、政府はどんどん増大していくわけです。

そうすると、どんどん赤字国債が増えていき、最後は国民に増税でしわ寄せがくる。

そういった意味で、通貨発行権を国が独占していると財政赤字に歯止めがない、するとインフレ政策をとりやすくなる。

これは今の日本の状況と完全に一致していますね。

 

インフレになれば国は借金を返すのに楽になる。

もっと単純なのは、累進課税制度です。

累進課税っていことは、同じ所得でも通貨の価値が下がって、自分の名目上の給料が上がると実際に手取りの経済的な価値は同じでも、一つ上に上がるんで税率が上がるから、そうなると税収が増えるので、実質何も起きていないのにインフレ政策をすると税収だけ増えていく効果があるので、国はインフレ政策をやりたいのです。

最後の3文のところが分かり難いかもしれませんので解説すると、

仮に物価の上昇率と賃金の上昇率が同じだとします。

すると名目上の給与が上がっても、物価も同時に上がってしまっているので、その上がった給与で買えるモノやサービスの総量は以前と変わりません。

しかし累進課税制度により、名目上の給与の上昇により所得が増えたということで、税率は一つ上の税率が適用されます。

累進課税制度では、一つ上の税率はもちろん高い税率になっていきますので、インフレ政策をすると税収が増えます。

だから、国はインフレ政策をやりたがります。

ということです。

ノーベル賞学者ハイエクの主張
「複数通貨の同時流通は単一通貨より望ましい」
理由1:一つの法貨のみでは政府は財政赤字とインフレ政策を取り、政府肥大化と増税が続く
理由2:複数通貨では、より安定的に運用される通貨を国民が選ぶので、政府に歯止めができる

 

単一通貨では政府の財政赤字に歯止めがかからなくなる

このハイエク氏が危惧したことは、まさに現在起こっている問題です。

一つの通貨では、通貨発行権を国が独占しているので、政府=公務員は経済競争の中にいないので、どんどん仕事を増やしていき(わざわざ複雑にして無駄な仕事を作ります)、どんどん人を増やしていき、全く採算の合わない公共投資や政策とかで、政府はどんどん肥大化していきます。

要は、経済競争の中にいないので、どんどん非効率的なこと、資本主義(資本主義は効率化を求めている)とは逆のことを行います。

そうなると、どんどん赤字国債が増えていき、財政赤字に歯止めがなくなり、最後は国民に増税でしわ寄せがくる。

そして、現在の日銀がやっているような、異次元緩和政策というインフレターゲット政策に突入していきます。

上記にも説明しましたが、インフレ政策は、国民から政府へ富を移動させる政策です。

 

複数通貨の競争が政府の無駄遣いによる財政赤字の抑止力になる

では、この政府や公務員の無駄遣いによる財政赤字の問題をどう解決したら良いかというと、ハイエク氏の主張では、

通貨というものは安定していることが望ましいので、複数の通貨が競争していれば、一番安定的通貨を国民が選ぶので、そうすると国に対してプレッシャーになるので、国の安定的な運営にもなるだろう。

というのがノーベル経済学賞のハイエクの主張である。

ということで、ハイエク氏は政府や公務員の無駄遣いによる財政赤字問題の解決には、複数通貨による通貨間の競争が必要だと言っています。

確かに一国に複数通貨が存在すれば、人々はより良いもの、より信用の置ける方を選びます。

仮に通貨の価値を棄損するような政策をしたり、無駄遣いにより財政赤字が酷いようであれば、人々はその通貨から他の通貨へ乗り換えます。

これは政府や公務員の無駄遣いによる財政赤字拡大に一定の抑止力を発揮しそうです。

結局、政府が運用・管理するようなものでも、競争原理が働かないと適正な状況を保てないため、適正な状況を保つためには、政府が運用・管理するようなものであっても競争の原理を導入するのが一番良いということです。

 

 

円と競合する自由通貨について、苫米地氏の見解と私の見解

そして、ここから今秋発行されるMUFGコインを含め、ハイエク氏のいう「円と競合する自由通貨になり得るのは?」という話になっていきます。

苫米地氏が円とビットコイン、MUFGコインついて、法定通貨としての信用力、物価変動適応総量調整、貨幣としての利便性、ユーザー数をまとめた表は下記となります。

 政府法定通貨「円」と競合する「自由通貨」になり得るのは?
   法定通貨
としての信用力
 物価変動
適応総量調整
 貨幣としての
利便性
 ユーザー数
  日銀が
事実上放棄
1億人
 ビットコイン × × 1300万人
 MUFGコイン AI技術で
有望
4000万人

 

円についての苫米地氏の見解

では次に政府法貨の円と競合する自由通貨になりえるのはどれか?ってことを考えてみたいんですけど、まず円というのは法定通貨で国が信用です。

そして重要なのは、ハイエクの言う自由通貨論では、インフレでもないデフレでもない通貨、物価の予想に対して予想を正確にして供給量調整することによって、インフレでもなくデフレでもない安定した通貨が作れる。

その調整ですが、実際円は放棄しました。

日銀はすでに毎年100兆円刷っているし、これからヘリコプターマネーまでやろうとしている。

事実上放棄していることになる。

貨幣としての利便性は、我々が一般的に使っているわけで、ユーザー数は約1億人はいるでしょう。

円についての私の見解

この動画で苫米地氏も述べていますが、日銀が発行する円がこの物価変動適応総量調整という通貨供給量を調整することで物価安定を計る役目を放棄したことが、これが私がビットコインに投資する理由となりました。

詳しくは私がビットコインに投資する理由私がビットコインに投資する理由2をご覧下さい。

 

ビットコインについての苫米地氏の見解

ビットコインについては、リーガルテンダーとしての「信用度」はゼロです。

何も担保もない、単に流通するインフラとしてあるだけです。

単に交換の手段としては便利ですが、物価変動を調整しようがない。

マイナー(採掘者)という人たちが、どんどんCPUパワーを使って電気代を使うと、その分を彼らは通貨を得られるというカラクリがあるので、一気に減らしたりすることはできるんですが

ダイナミックな変動能力は、ゼロです。

もちろん貨幣の利便性としては、仮想通貨は瞬時に海外送金できますので、脱税のリスクがあります。

そういった意味で、ビットコインがハイエクのいう自由通貨だと宣伝している人間は、本質的にハイエクの自由通貨論を分かっていない。

ビットコインについての私の見解

ビットコインはどこかの国の通貨ではないので、国の信用という裏付けは確かにないです。

まあ、ここら辺は私はどこかの国の通貨ではなくて逆に良かったと思いますが、この辺は人それぞれですね。

そして、通貨は別にみんなが価値を持つと思った段階で価値を持つので、そもそも担保とかは本当に必要なのかと考えています。

そこら辺を引き合いに出すのであれば、今の先進各国の借金は、もうその国で保証(担保)できるものより巨大だと思っているので、既に通貨の信用を担保してないと考えています。

この辺は以前取り上げた与沢翼氏も同じような見解でしたが、私は価値の交換媒体としての条件が揃っていて、時代にその交換媒体が合っていれば、価値の交換媒体として成り立つと思っていますし、何よりビットコインの価値は世界でもトップクラスの開発者達や技術者達がビットコインをより良いものにしようと日々改良を重ねている環境にあると考えています。

ここら辺については、私がビットコインに投資する理由3与沢翼さんのビットコインの見解動画を見ての感想で書いています。

 

物価変動の調整に関しては、苫米地氏の見解通りだと思います。

マイナーのところの「一気に減らしたりすることはできるんですが、ダイナミックな変動能力はゼロです。」

ここのところは、いったい何のことを言っているのか意味が分からないので、飛ばします。

最後のところの「そういった意味でビットコインがハイエクのいう自由通貨だと宣伝している人は本質的にハイエクの自由通貨論が分かっていない。」

というところは、確かにインフレでもデフレでもない通貨というところでは、ビットコインはハイエクのいう自由通貨には該当しなさそうです。

 

MUFGコインについての苫米地氏の見解

そうした中で、ビットコインのインフラを今回コインべースに出資して手に入れた三菱はどうなるのか?

「円」を超える可能性が出てきた。

三菱は172兆円の資金量を持っているから、172兆円の預金をベースに出すということは潰れる可能性はゼロに等しいです。

そうなると、政府並みの信用力があるわけです。

そして、これからAI(人口知能)が入ってくるので、リアルタイムでありとあらゆる物価の動きをモニターして、将来の動きを予想して、ダイナミックに通貨供給量を調整すると円と違ってインフレもデフレもない通貨が作れる可能性があります。

もちろん貨幣の利便性は、仮想通貨ですから現金より遥かに高いです。

一瞬で殆どコストなしで送金できます。

ユーザー数は、東京三菱銀行には4000万口座あるので、4000万人ですが圧倒的に1億人と変わらないレベルです。

こういったような流れで今度は、三井住友銀行、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行、あとgoogle辺りも参入してくるんで、そうなると複数の通貨と「円」が競合する世界になる可能性があり、目の前の未来です。

MUFGコインについての私の見解

確かMUFGコインは、1円=1MUFGコインで円と価値が連動します。

苫米地氏は別の動画で、MUFGコインと円の交換レートが将来変わってくると予想していますが、そこはまだ不確かなことです。

現時点での事実から言えば、MUFGコインは円と価値が連動してしまっているので、そもそもハイエク氏のいう複数通貨になりません。

さらに、物価変動適応総量調整を事実上放棄した円に価値が連動するということは、MUFGコインも物価変動適応総量調整を放棄しているのと同じです。

 

ハイエク理論とビットコインについて私の見解まとめ

ここまで見てきて、確かにビットコインはインフレでもデフレでもない通貨という物価変動適応総量調整機能がないので、苫米地氏がいうようにハイエク氏の主張する自由通貨には成り得そうにないです。

ただ、そもそもハイエク氏がなぜ複数通貨が必要だと主張したのかという根本的な理由を考えてみると、政府の財政赤字に歯止めをかけるためです。

そうであれば、別に解決策は円と価値が連動しない通貨が一国に同時流通している状態を作り出せれば、基本的には何でも良いはずです。

 

ここでじゃあ、今でも外貨や金(ゴールド)があるじゃないかと思われる方もいるかもしれません。

確かに現状でも外貨や金(ゴールド)も多少の抑止力にはなっていると思いますが、外貨や金(ゴールド)はそのまま国内のお店では決済手段として使えません。

そして、もしドルやユーロが普通に国内のお店でも使えたとしても、私の考えではそれでは十分ではありません。

 

なぜなら、先進各国の状況はどれも同じようだからです。

巨大な財政赤字と中央銀行の異常な金融緩和政策と、どの国もさほど変わりはありません。

一国に同じようなババを流通させたところで、どれもババです。

これでは、結局国民はババの中からしか選択できない状況です。

この辺はProof of Stakeに対する見解の記事中の「法定通貨に対する大石氏と私の見解」で書いています。

 

さらに各国経済は繋がっているので、経済大国のどこか一国が破たんすると連動して破綻してしまいます。

同じ状況のババ同士が連動して繋がっています。

これでは意味がないです。

 

ここで、ビットコインが登場します。

国家と連動していない、国家が破たんしてもビットコインは破綻しない。

このビットコインをハイエク氏の唱える自由通貨論の競争原理に加えることが、ハイエク氏の唱える自由通貨論の現代版・進化版なのではないでしょうか。